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アマ化石研究家・鈴木千里さん またもや快挙 大久町で採取の琥珀に新種のハチ

 いわきの中生代白亜紀後期コニアシアン(約8800万年~8630万年前)の双葉層群玉山層から出た琥珀から、世界最小級のハチ「ムカシホソハネコバチ」属の新種が見つかった。
 アマチュア化石研究家・鈴木千里さん(74)=四倉町=が過去30年にわたって採取し、2018(平成30)年に県立博物館に寄贈した「虫入り琥珀」の1つで、同館学芸員らによる研究グループが1日付の日本古生物学会の専門誌で新種「チサトムカシホソハネコバチ」として発表。鈴木さんは「いわきは化石の宝庫。世界的に貴重な地層であることが認められてうれしい」と成果を喜んでいる。
 鈴木さんがはじめて「琥珀」にふれたのは、中学生のころ。地元にあった郷土資料館「四倉史学館」に通うなか、研究家の小桧山元さん(故人)に実物を見せてもらったのが最初だった。
 高校進学後は化石発掘にあけくれ、特に恐竜時代、白亜紀の化石に夢中になった。社会人になってからもアマチュア研究家として活動を続け、四倉町から双葉郡楢葉町まで南北約30kmに及ぶ双葉層群の隅々まで歩きつくしたという。
 1985(昭和60)年には、当時国内最古級のハチ入り琥珀を発見して大きな話題に。今回の新種もこれと同じ大久町小久の道路工事現場で発見し、地権者にかけあって採掘した資料の一部だ。集中的に調査していた約30年分の「虫入り琥珀」89点を今後の研究のためにと同館に寄贈。昆虫化石専門の相場博明教育実践学研究所長、中生代の地層を専門とする同館の猪瀬弘瑛学芸員が共同で研究を進めてきた。
 新種のコバチは体長約0・4mmの世界最小級のハチの仲間で、雌雄そろって発見された。小さくて肉眼では見えないため「偽妖精バチ」の別称もある。標本では種の特定に重要な羽に見られるすじ「翅脈(しみゃく)」などもきれいな状態で確認できる。
 発表によると、同属は海外で9種、日本では岩手県の久慈層群から1種が発見されているが、雌雄で発見されたのは世界で3例目と希少性が高い。いわきは岩手・久慈、千葉・銚子とともに日本三大琥珀産地のひとつに数えられるが、新種の発見によりいわきの地層の研究価値も高まると期待される。

 鈴木さんが同館に寄贈している89点のなかには、アリ、ハエ、カメムシなど、さらに100匹分の昆虫化石が眠っているという。中には植物の種子や胞子などもあり、鈴木さんは「今後の研究によって生物相から当時の気候、自然環境が次々と明らかになっていくのでは」と期待を寄せる。
 鈴木さんの名が入った新種は2008年のアンモナイト、22(令和4)年のオーム貝に続いて3つ目となった。「化石少年」だった学生時代から60年に及ぶフィールドワークの今が集大成で、「膨大な資料の整理と次世代への引継ぎも合わせて行っていく」と鈴木さん。「資料を丁寧に調べてくれた研究者のふたりと、長年の研究を支えてくれた妻(美保子さん)にも感謝したい」と成果への喜びを語った。
 (写真1枚目:発見されたチサトムカシホソハネコバチ 2枚目:さらなる意欲を語る鈴木さん)

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