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勿来の関軸に地域活性化へ 民と官が連携した勉強会始動「街の個性大事に」

 奥州三関のひとつ「勿来の関」を軸に、地元の振興を考える「勿来地区〝民・官〟協働勉強会」が始動した。勿来の関は歌枕として、平安時代の武将源義家をはじめ、紀貫之、小野小町、和泉式部、西行といった多くの歌人によって和歌に詠まれてきた。江戸時代には磐城平藩主の内藤家が風光明媚な土地である点を踏まえ、その価値を高めたことでも知られる。史実としては関の場所は固まっていないが、官民一体で地域活性化を図ろうと立ち上がった。
 勉強会には、市南部地区中心市街地活性化協議会、勿来ひと・まち未来会議、いわき商工会議所勿来支所、県立勿来自然公園を守る会、勿来関研究会、市勿来関文学歴史観とともに、市と県いわき地方振興局、県いわき教育事務所が参加。初回は7月30日、市勿来支所で開かれ、各組織の関係者に加え、内田市長も出席した。
 勉強会の講師には、いわき総合図書館の元館長で、いわき地域学會幹事などを務める地域史研究家の小宅幸一さんを招いた。市職員OBでもある小宅さんは錦町在住で、市勿来支所長も歴任しており、「歴史・文化を地域活性化につなげ」をテーマに語った。
 小宅さんは勿来地区を巡り、明治の大合併の際に300~500戸の機械的割り振りで、鮫川・山田・錦・窪田・川部の5村が成立したと説明。昭和の大合併で勿来市が誕生する中で、企業城下町としての性格を有した一方、道路交通網の発達で中心市街地が空洞化した経緯を述べた。
 こうした背景を受け、「勿来の関を含め、地元の歴史や文化をどう後世に伝えるかが大事」と強調。史実と伝承を交えながら、勿来の関を守ってきた地元の思いを尊重しつつ、それぞれのつながりを考えていくべきと提案した。
 さらに話題は広がり、いわき市には市史編さん室がないと指摘。福島市や郡山市、会津若松市には相当する部署がある。特に郡山市は来春、市歴史情報博物館を開館し、博物館と公文書館を兼ねた施設として運用する。
 いわき市史は1994(平成6)年にまとめられたため、「その後の資料を交通整理する組織があっても良い。(行政書類の保存や選別に特化した)アーキビストの養成も考えるべき」と小宅さん。この街を俯瞰(ふかん)的にとらえる必要性を訴えた。
 内田市長は勉強会にあたり、「今の時代に即したまちづくりに向け、街の個性を大事にした取り組みが必要。文学を一つのアイデンティティーにしたい」と述べ、今後の発展に期待を寄せた。
 次回の勉強会は10月を予定しており、勿来の関が当地にあったとまとめた「勿来関研究会」が発表する。
 (写真:小宅さんの講話に耳を傾ける参加者)

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