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<震災14年ー向き合う②>透析患者の避難を論文に 常磐病院・高松克守さん

 2011(平成23)年の東日本大震災・東京電力福島第一原発事故では、医療機関を取り巻く環境は大きな課題となった。いわき市では当時、地震による長期間の断水に加え、原発事故で医療材料が届かない状況から、多くの人工透析を必要な人たちは避難を余儀なくされた。
 こうした中、常磐病院(常磐上湯長谷町)などのときわ会グループでは581人の透析患者を無事に県外へ避難させた経験から、関係者への聞き取りを交えながら、次の災害に備えた論文を取りまとめた。
 論文は常磐病院で透析室の理学療法を担当する高松克守さん(33)が中心となり、同病院や県立医科大(福島市)の医師らと連携して発表。防災関連の海外論文誌「International Journal of Disaster Risk Reduction」に掲載された。
 高松さんは市内で唯一の腎臓リハビリテーション士の資格を持っており、透析中に運動を施す先進的な取り組みを進めている。普段から透析患者と密接にかかわるため、改めて災害時にどのように行動すべきか考えた。
 ときわ会では、原発事故による避難指示が出た富岡クリニック(双葉郡富岡町)のほか、福島第一原発から30km圏外の常磐病院、いわき泌尿器科(内郷綴町)から、新潟県に154人、千葉県に45人、東京都に382人を移動させた。

 3月11日の震災発生に続き、12日に福島第一原発1号機、14日に同3号機で水素爆発が起きるも、16日までに患者移送の手配を済ませ、17日に異例の大規模避難を成し遂げた。
 透析は週に3回で、1人あたり1日200lの水を必要とする。避難には決まった指針はもちろんなく、急いで在籍する医師の個人的なつてで受け入れ先を探した。患者を乗せるバスも何とか用意できた。「透析をする人たちは、身体機能が低下する中で災害に弱い立場。さらにスタッフも被災しているにもかかわらず、患者をケアする必要に迫られた」
 何とか避難は成功したが、震災から14年経っても、全国的に決まった透析患者の避難マニュアルはまとまっていないという。高松さんは論文執筆にあたり22人にインタビューし、キーワードを抽出する質的分析の手法で問題点を探った。
 論文を踏まえ、「災害はいつ起きるか分からない。平時の準備段階から発生後の対応まで、透析患者の安全と治療の継続を図っていく仕組みを構築することが大事。将来に向け、当時の記憶をしっかりと伝えていきたい」と胸を張る。
 (写真1枚目:論文について語る高松さん 2枚目:バスに乗って避難したときわ会の透析患者=高松さん提供)

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