ふくしま海洋科学館「アクアマリンふくしま」が、丸い体形と愛くるしい表情で親しまれている魚・ナメダンゴについて、オスとメスの違いをはじめさまざまな生態を明らかにしたとして、英国の著名な魚類生物学に関する学術誌「Journal of Fish Biology(ジャーナル・オブ・フィッシュ・バイオロジー)」に研究成果が掲載された。同館は6日まで、春のイベント「花よりナメダンゴ」を開催しており、ちょうどホットな話題となっている。
ナメダンゴは約5cmの大きさで、国内では主に北海道の沿岸に生息している。冷たい環境を好むため、普段は水深100m以下にすむが、冬季になると産卵のため水深10m程度まで浮上する。同館ではダイバーの協力を得て採集している。
論文「ナメダンゴの繁殖行動、発生形態、性的二型について―水族館での長期研究」として発表したのは、松崎浩二・展示第1グループリーダー(50)。松崎さんによると、ナメダンゴを含むダンゴウオ科の生き物は、オスとメスで形が違う「性的二型」と呼ばれる特性を持ち、雌雄で別種とされていた種もあった。
今回は同館で卵から4年にわたって観察を続け、ナメダンゴはオスとメスで体の部位が実に15カ所も異なることを突き止めた。これはダンゴウオ科で最も多いという。
成魚ではオスはメスより体長が33・7%大きいという比較から、成長につれ発達する体のいぼ(骨質突起)がふ化から約200日を境に、オスは減っていき、メスは増えていくと判明。口の形についてはオスは卵を保護するため、大きくなることなども分かった。
国内で唯一とされるナメダンゴの卵のふ化にも取り組み、生まれるまで約110日かかり、一定の魚類で見られるオスが卵を守る習性を持つ点も明らかにした。こうした知見の新しさが、ジャーナル・オブ・フィッシュ・バイオロジーで評価された。同誌は1969年創刊の国際的な査読付きの学術誌で、松崎さんは初めて載った。掲載は4月24日付。
松崎さんは「ナメダンゴはそのかわいらしさから人気で、多くの方に身近な魚ではあるが、まだまだ知られていないことが多い。1つ1つ解明していくことで、国際的にもその生態を伝えていきたい。引き続きいろいろな魚の繁殖行動を研究しければ」と話している。
ナメダンゴは「花よりナメダンゴ」の会期中は、1階エントランスホールでも展示しているほか、2階の親潮アイスボックスでは同館で繁殖した個体を見ることができる。大型連休に合わせ、エサを探して泳いだり、目をキョロキョロさせたりする姿に会いに行こう。
(写真:アクアマリンふくしまが生態を明らかにした「ナメダンゴ」=同館提供)
※初報に誤りがあったため修正しました
ニュース
アクアマリンふくしま ナメダンゴの生態明らかに 6日までイベントの主役
