いわきの中生代白亜紀後期コニアシアン(約8800万年~8630万年前)の双葉層群玉山層から出た琥珀(こはく)から、新属・新種の昆虫化石が発見された。
アマチュア化石研究家・鈴木千里さん(75)=四倉町=が久之浜町末続地内で過去に発掘し、県立博物館に寄贈した資料のひとつで、約8700万年前、世界最古のフタガタカメムシ科の化石である可能性があるという。
研究成果が今年3月末に日本古生物学会の専門誌に和名「クチナガフタガタカメムシ」、学名「Iwakia longilabiata Aiba, Souma & Inose, 2025」として記載され、会津若松市の県立博物館が発表した。
鈴木さんはいわきに分布する恐竜時代の双葉層群をフィールドに調査・研究に励んでおり、1985(昭和60)年には当時国内最古級のハチ入り琥珀を発見して大きな話題となった。
2003~19年にかけ、これまで発掘した虫入り琥珀をはじめとする大量の化石を研究の一助にしてほしいと同館に寄贈。昨年はこの資料のなかから、世界最小級のハチ「ムカシホソハネコバチ」属の新種が発見され、学名「チサトムカシホソハネコバチ」として発表された。いわき市産の琥珀から新種が出たのは初めてで、今回で2例目となる。
発見された新種のカメムシはメス。突き出したような口の形から暫定的にフタガタカメムシ科とされたが、同科の仲間にはない奇妙な特徴を持っている。
その一つが長い口吻(こうふん)で、共同研究チームは「将来的にフタガタカメムシ科ではなく他の科へ分類される可能性もある」といい、「この奇妙なカメムシ化石の真の正体とフタガタカメムシの進化史に迫るためにも、今後の追加標本の発見や研究が期待される」としている。
フタガタ(二型)とは、雌雄の形が異なっている特徴を表しており、和名の「クチナガ」は口吻が長いことから、ラテン語の学名「Iwakia longilabiata」は「いわき産の、口が長い」ということから命名された。
「いわきという名を学名にしててもらい、いわきの地層の重要性を世界に発信できたことが何よりうれしい」と喜びを語っている。
(写真:クチナガフタガタカメムシの琥珀)※メス A:背中側 B:腹側 C:右側面
ニュース
四倉の鈴木さん再び快挙 久之浜の地層で発見の琥珀から 新種の昆虫化石
