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片隅抄

2010.08.12

 今年話題となっている1冊に、小説『四十九日のレシピ』がある。一家の母を亡くした家族の再生の物語だが、内容とは別にふと「四十九日で穏やかに見送れるのは、ある意味幸せな死別の形だろう」と思った▼四十九日とは仏教において、人が死んでからあの世へと旅立つまでの中陰の期間を指す。遺された側にとっても、故人の死を受け入れ、日常を取り戻していく期間となる▼しかし、何十年たっても癒えぬ悲しさや悔恨を伴う死もある。それを乗り越えられず、苦悩し続けている遺族もいる。今日8月12日、520人が死亡した日航ジャンボ機墜落事故から25年になった。今なお家族の死に納得できる遺族はいないはず▼そんな思いで、遺族女性が25年間を振り返った著書を手に取った。そこにあったのは、悲嘆を力に変え生きてきた幾人もの姿。読んで、事故以来の艱難辛苦に胸が詰まると同時に、それでも前向きに立ち直れた人がいることを知り、心が打たれた。

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