昔のテレビドラマが再放映されることはよくあるが、このところ、そんな中の1本を毎夜楽しみに視聴している。40年以上前のホームドラマだ▼タイトルは「ありがとう」、主演は水前寺清子。「毎週見ていた」という記憶はあれど、ストーリーは覚えておらず、今や大御所だったり鬼籍に入ったりしている俳優の演技に見入っている▼で、一番驚いているのは、随所に歌のシーンが出てくることだ。まるでミュージカルのように、出演者の独唱や合唱などが毎回登場し、それが物語にすっぽり溶け込んでいる。今見慣れている平成のドラマにはないこんな演出が新鮮でもあり、また、当時は全く違和感なく受け入れていたのだろうことが、不思議な気さえする▼そうした中に、いろは歌と50音を組み合わせて、日々の暮らしの中にある人の心根を歌った1曲があった。「ちりぬるをわか、なにぬねの、さびしくなったり、よろこんだり」という歌詞が、何とも心に染み入った。