こんな話を聞いた。夫婦共働きのある家庭でのエピソードだ▼夫だけでなくときには妻も仕事が忙しい日があり、幼稚園に通う娘のお弁当を、朝、父親が作るときもあるのだとか。父親にとってそれは容易なことではないのだろう。話によると、おかずが2品ほどドン、ドンといった感じで盛り付けしてあったそうだ▼おそらくはタコさんウインナーとかウサギのリンゴとかの赤に加え、黄色の卵焼きに緑の野菜を添えるといった彩りも考えた定番の〝ちびっ子のお弁当〟とは違った出来栄えであったのだろう▼子どもたちは残酷だから、園の昼食の時間のとき、その女の子のお弁当を見てはやしたてた。でもその女の子は「パパの作ったお弁当、おいしいもん」と胸を張ったという。いい話だ。その女の子は、ふだんから父と母のことをよく見ているのだろう。40年ほど前の小学校の弁当の時間に、農業で忙しい母親が作った弁当を隠しながら食べていた自分が恥ずかしい。