福島市から吾妻小富士に向かう途中に、源泉かけ流しの高湯温泉がある。特徴はゆで卵のにおいが強く漂う白濁の湯。その名の通り標高750㍍もあり、市街地から遠く、そこへ行くまで曲がりくねった登り坂はひと苦労だ▼初めて高湯に日帰りで出かけたとき、うっかり終了の午後2時を2、3分過ぎてしまった。それでもここまで来たのだからと交渉したのだが「うちは2時までですから」とけんもほろろに断られた▼当然、遅れたこちらが悪い。しかし観光地の旅館であれば「遠いところわざわざおいでいただいたのにすみませんが」の一言があってもいいのではないかと思う。ならば次の機会に来よう…とも思う。このとき冷たくあしらわれたイメージが残って、高湯温泉は二度と行っていない▼もてなしの気持ちを言葉にするのに、お金の出費はない。客を大切に思えば自然に出てくるはずだ。それによって、旅行先でのまちや人の印象も変わってくることだろう。
片隅抄