幼いころの思い出に「梨じいちゃん」のことがある。じいちゃんの家は多分梨農家で、秋になると背負いかごいっぱいの長十郎を、平の赤井から海辺のわが地区まで売りに来た▼バスを乗り継ぎ、何時間も掛けて来ていたのだと思う。梨そのものと長十郎と似た色に日焼けしたじいちゃんを毎年、楽しみに待っていた▼ところで先日、福島県オリジナル新品種「涼豊」を食べた。新高を母、豊水を父に交配し作り出した梨で、大きさは新高と同等だが形は少し平たい。実は新高より軟らかく、みずみずしく甘かった。県いわき農林事務所によれば、旬は9月下旬~10月初め、いわきでも平成17年から赤井や平窪、小川、好間など計4㌶で栽培している▼市内からの出荷は21年に始まり今年も10月初めに出荷されたが、本格化にはなっていない。他方、二本松の岳温泉では旅館組合が宿の料理への導入を検討しているという。ならば「いわき湯本温泉にも」と期待したくなった。