新型コロナウイルスの影響で、入学式を中止にするという学校が少なくない。希望を抱いて新たなスタートを切ろうとしている子供たちのことを考えると心が痛む▼半世紀近く前のことだが、中学に入学したときのことを思い浮かべている。その学校の校則の厳しさは市内でも有名だった。校外での行動も厳しく決められていて、映画は保護者同伴でなければいけないという規則もあった▼当時の担任は、両親が忙しく同伴してもらえない生徒たちのことを考えてくれた。先生が引率して映画を見に連れて行ってくれたのだ。赤いメガネが印象的な英語の先生でもともと映画好きだったのかもしれないが、生徒思いの優しい先生だった▼その先生が先日、会社に抄者を訪ねてきた。退職後、ご主人と市内の山間部に転居し陶芸活動をしているという。残念ながら会うことはできなかったがしばし、当時の思い出に浸ることとなった。学校は勉学の場だけではないと、再認識した。
片隅抄