いわゆる鉄ヲタではないが、幼少時に松本零士さんの代表作「銀河鉄道999」を食い入るように見つめた記憶から、今も蒸気機関車を見ると心弾む▼駅舎もそう。物語では永遠の命にあこがれる少年と謎の美女が、下り立つ停車駅(星)でさまざまな事件に巻き込まれるが、構内に立つと当時を思い、郷愁にかられる。集団就職で上野に向かった亡き父母からの刷り込みもあるのだろう▼大正4年に開業し、平成元年に無人化された小川郷駅。駅舎は補修を繰り返し、そのままの姿を残している。足を踏み入れると大量の図書が。地元有志が待ち時間を快適に過ごしてもらおうと設置したそうだが、盗難される心配はなく逆に蔵書が増えているという▼利用は減少傾向にあり存続を危惧する声も。住民に愛され、近代化遺産として価値ある駅舎だけに、アイデアを振り絞って全国から人が集う名所に育てられないか。それだけの魅力と可能性が、十二分にあると思うのだが。