岸田首相がウクライナを電撃訪問した。戦地や戦闘が継続的に行われている地域に、日本の首相が訪れるのは戦後初めてとなる▼法の支配に基づく国際秩序を守り抜くことは大切だ。一方で「ウクライナには報道されない負の側面がある」と、取材で知り合った男性から聞かされた。彼は昨春、隣国ポーランドからウクライナに入り、後方支援活動に従事した▼もともとは義勇兵として、遠い戦地に貢献したい思いで渡航した。そこでは、自分と同じように正義感に燃えている人にも出会ったが、中には単に人を殺めたいだけの外国人も多くいたという。「こんな人たちと一緒に、自分は死ぬかもしれないのか」。平和な日本にいたからこそ、分からなかった戦争の現実を嫌になるほど知った▼「渡航する前と後では価値観も変わった」とし、機会があれば平和のあり方を説きたいと話す。戦争のリアルに触れたからこそ、1日も早いウクライナ侵攻の終結を願っている。
片隅抄