いわき昆虫記
ふるさと自然散策・いわき昆虫記108
こげ茶色の翅に3本の白い帯
早朝からミンミンゼミが鳴き、ツクツクボウシも加わって、夏の暑い一日が始まる。石森山から林道絹谷石森線を行く頃には暑さもピークに達し、アブラゼミとニイニイゼミの鳴き声の音圧がすごい。ヤマユリの花咲く道を通り抜けて、たどり着いたのは平絹谷地内の丘陵地。 雑木林あり、草原あり、渓流もあり、環境豊か。ホトトギスのさえずりが涼やかだが、飛び交う虫の姿が見当たらないのは暑すぎるからか。そんな中、林縁の木陰の中に入って行く1匹の蝶のうしろ姿が目にとまった。茂みの中で翅をピタリと閉じて涼んでいたのは、タテハチョウ科の「コミスジ」だった。
コミスジは、夏の丘陵地の林縁などではお馴染みの蝶で、翅を開いてとまった時の大きさが5㌢ほどの小型種。こげ茶色の翅に白い斑紋が並んでいるのが特徴的で、帯状の点列が3本筋に見えるのが和名の由来になっている。翅の裏も茶系で地味な配色だが、胸部や腹部が太陽光線を受けて青緑色に輝く光沢が美しい。
幼虫は樹林を覆うフジやクズ、ハギなどのマメ科植物を食べて育つ。成虫も林の周辺に多いのは、このためだ。越冬態は幼虫で、春になると幼虫は育ち、蛹の期間を経て成虫が羽化する。
木陰にいたコミスジが活動を再開したのは、そよ風が吹いて気温も少し下がってから。数回羽ばたき上昇すると、水平に広げた翅で滑空して、弧を描くように葉の上に舞い降りる。ハングライダーのように飛ぶ姿がスマートで格好がいいのがコミスジ本来の姿だ。
撮影を終える頃には、ヒグラシの蝉しぐれ。ヒグラシが大好物のサンコウチョウとの間近な出会いもあった。