奈良県宇陀市の山中にある室生寺。日本を代表する写真家土門拳が生涯をかけて撮り続けたことでも知られている。こちらも過去4度にわたり訪れたことがある▼近鉄室生口大野駅から目的地まで、やや長時間バスに揺られながら、この深山の地に寺を建立した先人の労苦に思いをはせた。数ある歴史的建造物のうち、お目当ては創建から1200年以上を経た国宝五重塔にあった▼その塔も平成10年の台風7号による強風で、スギの大木の直撃を受け五層屋根などが損壊した。3年後に復旧されたのち、再び足を運んだが古色豊かな風情は感じられなかった▼先の記録的豪雨で被災した国宝・白水阿弥陀堂。きのう文化庁による現地調査が行われたが貴重な建物、仏像に破損などの被害は確認されなかった。ただし堂内には泥水が流れ込んだため、今後の注意が必要になる。さらに浄土庭園も泥が堆積し、かつての景は見る影もない。ハスの花が咲き誇る姿が待ち遠しい。