一昨年に父が亡くなり、母もまた最晩年を迎えているときになって、急にわが家のルーツを知りたくなった▼洗い物をしている曾祖母の姿をおぼろ気に記憶しているが、それは勝手につくった幻かもしれない。家系図などあろうはずもなく、仏壇の位牌と墓碑銘には三、四代さかのぼったくらいしか刻まれていなかった。生前の父に聞いたことがあるが、記憶は頼りなかった▼祖父母が亡くなり、父が亡くなると遠い親類の人たちも同様に鬼籍に入ったり高齢になって、顔を合わせる機会もない。恥ずかしながら叔父・叔母、いとこがどうしているのかも定かでないのだ。急に家系のことが気になりだしたのは年をとったからか▼NHK「ファミリーヒストリー」を見てもらい泣きしない回はない。番組が総力挙げて江戸時代の頃までさかのぼって先祖を探し当て、当人が今いるのはそうした人たちの血を受け継いできたことがわかる。家族の大切さを今になって感じている。
片隅抄