昨日の夕飯を思い出せないのは、単なる物忘れ。食べた体験そのものを忘れると問題という。１３年前の記憶はどうだろうか。なぜか脳裏に英国生まれの歌手、オリビア・ニュートン・ジョンが刻まれている。当時の番組表を見て合点がいった。地震の１時間ほど前まで、ソファーに横になりながら特集番組を視ていた▼「震災の記憶を風化させない」。この時期になると、よく耳にする言葉だ。当時何が起きたか、そして何ができたか――。少しずつ震災を知らない世代が増えていく中で、災禍を目の当たりにした一人として、伝える責任を感じている▼水や食料など、普段当たり前に手にしている物も不自由することは、１月の能登半島地震でも改めてクローズアップされた。小紙では１１日付の企画特集で、必要な品々を紹介しているので参考にしてほしい▼人間は忘れる生き物。無理につらい体験を思い出す必要はない。ただ災禍と向き合った日々は、決して無駄ではない。
