24日の山形戦。試合終了後、熱狂的なゴール裏だけでなく、ホーム自由席を真っ赤に染めるサポーターたちの多くが、帰らずにメインスタンドをじっと眺めていた▼女性が寂しそうにつぶやいた。「もう(私たちのこと)忘れちゃったのかな」。杞憂と分かったのは数分後。選手入場口に真っ青のジャージを着たなじみの顔が姿を見せると、歓声が沸き起こった。いわきFCをJ2に昇格させた立役者の1人、有田稜選手だ。ゆっくりとピッチを歩き、何度も何度も頭を下げ、手を振った▼「ありたぁー、がんばれ!!」。昨季、苦しむストライカーに向け、ありったけの声を張り上げる小さな男の子の健気な姿が忘れられない。進む道は違えども、あのとき、その子にとって間違いなくヒーローだった▼チームを去っても愛される選手がいる。いわきFCが地域に根差し、サポーターとともに着実に歩みを進めてきた証拠だ。有田選手をあたたかく迎える情景に胸を打たれた。