四倉町東二丁目の「食処くさの根」のメニューに、今月から新しいラーメンとみそラーメンがお目見えした。四倉町で約65年営業し、惜しまれながらも暖簾(のれん)を下ろした「富久(ふく)寿司」の名物ラーメンを受け継いだもので、店名を冠して「富久ふくラーメン」「富久ふく味噌ラーメン」と名付けた。地元で長年親しまれてきたラーメンの「復活」が、話題を集めている。
富久寿司は寿司にとどまらず、ラーメン、カレーライス、かつ丼なども人気の名店で、出前を取り家族で味わうなど、四倉の住民たちにとっては「思い出の店」。特にしょうゆ味のラーメンは、どこか懐かしさを覚える昔ながらの味わいで、熱烈なファンも多かったという。
店は作田富男、セツヨさん夫婦が二人三脚で切り盛りしていたが、早くに夫を亡くしてからは、セツヨさん(88)がひとりで店を守ってきた。しかし高齢になったことに加えて、後継者がいなかったため、2年半前に店を閉じる決断をした。
一方、くさの根では縁があって喜多方ラーメンをお客に出してきたが、代表の新谷尚美さん(72)は「より地元四倉の人たちに親しんでもらえるような地域密着型のラーメンを提供したい」との思いを抱いていたといい、印象に残っていた富久寿司のラーメンに着目。共通の知人を介して、セツヨさんに作り方を教わりたいと頼み込んだ。
するとセツヨさんは「この先、誰かが店を続けるのであれば教えなかった。調理器具やどんぶりも処分してもう店を開けることもないし、うちのラーメンの味を受け継いでもらえるなら」と、快諾。尚美さんは早速、地元の製麺所に富久寿司で使っていたのと同じ麺を発注し、スープはもちろん、トッピングするメンマ、ナルト、チャーシューなども出来るだけオリジナルに忠実に再現することを目指した。
スープづくりは尚美さんの夫、重宣さん(74)が担当した。ふたつの新ラーメンをメニューに載せたところ、さっそく「富久寿司の味」を求めて4日間ほど続けて食べに来たお客もいたそうだ。
約65年続き、一度は途絶えた老舗の味の再現に取り組んだ尚美さんは「教えてもらったことに感謝しながら、これからも工夫を重ねて、さらにおいしいラーメンを作っていきたい」と決意を新たにした。
(写真1枚目:新たなメニューとなった「富久ふくラーメン」 2枚目:くさの根の新谷尚美さん)