取材でここ数年、中山間部に足を運ぶことが増えた。車窓からの情景は30年近く前と「さほど変わらず」、年を重ねたせいかやたら懐古することが多くなった▼阿武隈で大雪となった日に上三坂の集落を訪れ、70代の夫婦とつい長話になった。「ここはいわきの辺ぴだけど、小野に行くのも遠野や古殿、郡山方面に行くのも便利でハブのような所。磐越道にもあぶくま高原道路にも近い」▼旦那さんは仕事で2年間郡山に通い、今も須賀川に週3回のペースで出勤する。片道1時間もかからず十分通勤圏内だ。「けどね、若い人はウチの子含めて3人ほど。といっても50代だけど。10年後は限界集落。どうなるんだろう」▼豊かな自然に立地も申し分ないが、車がないとどうしようもない。医者もスーパーも集落にない。空き家は増え、耕作地の管理は誰がするか。夫婦がこしらえた凍み餅をおいしくいただきながら、中山間部が抱える現実に思わず沈うつな気持ちになった。
片隅抄