メダル獲得の余韻が冷めぬロンドンオリンピック。興奮と落胆が入り混じったものの、健闘した日本選手に拍手を送りたい▼だが大会終盤、サッカー男子日韓戦で危惧したことが現実になった。試合は0―2で韓国が銅メダルを獲得。勝利に高揚したのだろうか、1人の選手が客席から渡された領土に関するプラカードを掲げ、自国のものだとアピール▼政治的行為を禁止するオリンピック。熱狂の渦中、誰も止めることができなかったのか。64年の東京大会では、柔道無差別級決勝で日本の神永昭夫を破ったオランダのアントン・ヘーシンクが、狂喜し畳に駆け上がろうとする自国民を制止した▼相手へのリスペクト、ルール・マナー順守はスポーツだけでなく、国際関係も同じ。ただ、一方的な挑発にも限度がある。82年のフォークランド紛争では、武力でアルゼンチンを撃退した英国サッチャー首相。日本にはできないことだが、毅然とした外交姿勢は必要だ。