うまいものを食べることはささやかな楽しみだ。外食に限っては偶然、いい店にめぐり合うことは少ない。個人の好みもあるが、人づてに聞くのもよい▼中山間地域での成人式取材後、遅い昼食を取るため、ある人に教えてもらった飲食店を訪れた。席に着き、しばらく店員さんを待ったが来る気配はなく、声をかけても反応がない。そのうち先客に料理が運ばれてきた▼だが、こちらには目もくれず引っ込んでしまった。祝いの日だ。仕出し料理の注文でも受けていたのかもしれない。怒る気にもならず、あきらめて店を出た。もう行くことはないだろう▼明日から「いわき『こども店長』事業」が展開される。トップの勿来地区では小学生が5つの小売店で店長を務め、接客や品物並べを体験する。人気子役のようなふるまいは必要ない。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」。この言葉をはっきりと伝えればいい。当たり前だか、大人にも同じことが言える。
片隅抄