梨園の御曹司が酒場で暴行された事件がここ数日、メディアで頻繁に伝えられている。言った言わない、殴った殴らないと当事者間の供述が今もって定まらない▼前後不覚、人事不省に陥るほど酒に溺れたのだろう。観客を魅了する目千両。役者の命ともいうべき顔面に重傷を負い、予定されてた公演もキャンセルするなど、「芸のこやし」にしては高い代償になったようだ▼昭和40年代、宇津井健主演の「ザ・ガードマン」というテレビドラマがあった。悪と闘うストーリーだったが、協賛スポンサーの洋酒メーカーに配慮し、番組制作上では酒がらみの犯罪、事件はご法度だったらしい▼飲酒は精神を覚せいさせ、気分をリラックスに導くが飲む側も心しなくては。「酒の席の上で」などと責任転嫁はできない。先人が築き上げてきた伝統芸能を継承すべき人物の不祥事。芸の師匠はいても、日ごろの行状をいさめる側近がいなかったのか。気になるところだ。