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片隅抄

2011.05.27

 総合文化誌『うえいぶ』第44号が発行された。編集、印刷など一連の工程は震災をはさんでのことだろう。まず、吉野せい賞記念講演会での池澤夏樹氏「世界文学全集を編む」が巻頭を飾っている▼目次を読み進めると、終わりに「エデン  佐藤武弘遺稿」とあった。かつて磐城武史のペンネームを持ち、講談社小説現代新人賞を受賞した江名町出身の新進作家だったが35歳で病没している。その故人が中学時代、ノートに綴った散文が紹介されていた▼後年の作品は同誌の前身『6号線』で読むこともできるが、多感な時期に記した学校生活、家族、友人などに関する独白は興味深いものがあった。例えば「人間は偉大な動物である 科学を手にしているからである」▼さらに「人間は悪いと知りながら それを実行するものである」と続く。多くの10代は悲惨な大震災を体験し、世の不条理も知ったことだろう。今ならその思いを書き残し、伝えることができる。

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