いわき市民なら記憶にとどめてほしいプロボクサーがいる。その名はスパイダー根本。川前町出身で、ひげ面、身長はわずか155㌢しかなかった。素朴な人柄で、同時期の具志堅用高のような華やかさはないが、打たれても執ように前に出て連打を浴びせるファイターだった▼2度目の世界挑戦の相手はパナマのエウセビオ・ペドロサ。WBA世界フェザー級王座を7年間、19度防衛した伝説のチャンプと15回まで戦い抜き、判定負けしたのは80年1月だった▼日本王者として14度防衛し引退した彼は、ジムがあった埼玉県草加市の教育委員会に勤務してスポーツ振興に当たり、退職後はジムを開設。会長として今もボクシングにかかわっている。見事な転身ぶりである▼あれから31年。同じWBA世界フェザー級に大みそか、中央台出身の細野悟が挑戦する。相手はやはりパナマ人。何という因縁だ。ぜひベルトを奪取して、2人そろっていわきに凱旋してほしいものだ。
片隅抄