「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった」。1968年にノーベル文学賞を受賞した文豪・川端康成の『雪国』の冒頭だ。群馬県と新潟県を結ぶ清水トンネルを指し、冬の上越線に乗って、その情景を確かめに行ったことがある▼雪景色は風情あるが、会津を中心に続く雪害の報には心を痛める。県内では1963年2月以来、62年ぶりに大雪による災害救助法が適用された。高齢者世帯の屋根の雪下ろしなどの費用を国や県が負担する▼いわき市では県の要請を受け、災害マネジメント総括支援員(GADM)の資格を持つ職員を含む3人を13日から、大沼郡三島町に派遣する。県内市町村で複数の職員がGADMを持つのは本市のみ。昨年正月の能登半島地震や、7月の秋田県由利本荘市を襲った豪雨災害でも活躍した▼震災や水害を経験した本市だからこそ、初期の体制づくりの大切さを良く知る。雪に苦しむ人たちの助けになってほしい。
片隅抄