動物は「動く物」と書くが決して物ではない。ましておもちゃではない。報道を聞いて、そんなことさえ分からないのか、と情けなくなった人も多いだろう。京都の動物園で起きた少年による猿山への花火投げ込みだ▼震災以来、避難のために家畜やペットを置き去りにせざるを得なく、苦しい思いをしている人々の話を何度も聞いた。また「見捨てられない」と一緒に避難し、「ペットが生きる支えになった」と語った人もいた▼動物、特にペットには、人を癒やし勇気づける力がある。決して他人の前では見せない心を、無防備にしてしまうことさえある。そんなペットと飼い主の交流を取材することがある。感じるのは、家族と違わぬ存在だということ▼そんな折に耳にした花火投げ込み事件だったが同じころ、病気で足が立たなくなった犬に車いすを装着し、従前通り飼い続けている人と出会った。「だって命ですよ」重くかつ慈愛に満ちた一言が心に響いた。