世の中には何げない一言で心が和むことがある。市内のあるスーパーでは、会員になると水が無料でもらえるサービスがある。夕方ともなれば機械の前には順番待ちの列ができるほど。その日も数人の人が並んでいた▼抄子は4番目。少しイライラしながら待っていた。2人目は高齢者の女性。普通、水をタンクに詰め終えると、そのまま黙って立ち去るのだが、この女性は詰め終わった後、並んでいる人たちに向かって「すみません」と言って立ち去った。この言葉を聞いた瞬間、それまで抄子の心の中にあったイライラは消え、代わって「お互いさま」と心の中でつぶやいた▼実は抄子も恥ずかしさもあって黙って立ち去っていた組。その際、並んでいた人たちの気持ちなど考たこともなかった。それがこの女性のおかげで気付くことができた。女性の一言であらためて周囲の気遣いの大切さを教えられた▼それからは「お待たせしました」と言うようにしている。
片隅抄