「星一氏が米國から自動車五千臺購入」。大正12年10月23日付の新聞記事の見出しである。この年に起きた関東大震災で鉄道網が壊滅的な被害を受けたことから、郷土の偉人が救済に乗り出したことを伝えている▼記事では、星が自動車王ヘンリー・フォードと1万台の売買交渉を重ねた末、デトロイト工場経由で5000台の輸入契約が成ったと紹介する。この90年前の出来事は、最近発刊された『いわき市勿来地区地域史2』で分かった▼輸入は「斡旋」という形で実現したが、幅広い人脈と在米経験から自動車の有効性に着目した国際人星の復興支援だ。事実、輸入車は主に関東圏で走行したという。製薬王のイメージが強いが知られざる一面を知った▼埋もれた歴史に光りを当てた『同史2』。今巻は明治から昭和前期までを焦点に勿来地区の歴史、地誌が中心。写真、図版も多く全459㌻と読み応えがある。2年を費やした同編さん委員会渾身の労作だ。