いわきを舞台にした映画「それぞれのヒーローたち」が完成し、全国で上映され話題になっている▼1983年、平工高の軟式野球部が全国大会で準優勝した実話を基に、球児らの青春と、東日本大震災後の人生を描いた復興の物語。原作は当時、軟式野球部のマネジャーだった高梨由美さん。映画は高梨さんの目を通して描かれる一方、今は東電社員であり、双葉町の町議を務める野球部のエースの苦難が語られる▼大震災から約8年が経過し、被災地では年々復興が進み、震災の傷跡はほとんど見られなくなった。ただ、このエースのように心に傷を受け、今も立ち直れないでいる被災者はまだいる。道路は直せば元に戻るが、一度受けた心の傷は簡単には癒やされない。それでも前を向いて、歩かなければいけないのが被災地の人たち▼高梨さんは映画で「福島の子どもたちが故郷を誇りに思えるような勇気の種をまきたい」と言っていたが、そうなることを願いたい。