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片隅抄

2020.6.20

わが老父は今年9月でちょうど90歳。ヘビースモーカーだったこともあり14年前、肺気腫で入院。退院後は鼻からの酸素吸入が欠かせない体になった▼それでも退院時に半年の命と告げられたから、よくぞここまで長らえたものだ。自分が守り抜いた家の将来が心配で死ぬに死ねないのだろうと跡取りの愚息、61歳は思う▼井上陽水の『人生が二度あれば』で“父”は、欠けた湯のみ茶わんに映る皺が増えた自分の顔をじっと見、こたつに入って若いころを夢見るように思い出す。歌詞では「父は今年二月で六十五」と意外に若かったが、この曲が世に出た昭和47年の男性の平均寿命は約70・50歳(現在は81・25歳)だった▼しかしここ2、3年で肺機能や足腰の衰えが顕著となり、認知症の症状も出てきた。鋼のような父だったが、今なら指1本で倒せる。明日は父の日。最近はこれが最後と覚悟しながら祝ってきた。親不孝の愚息は、どうやって祝おうか、今も思案中だ。

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