財布の中のお札は折らないのが信条だ。子どものころ五百円札だったか千円札だったか、折り紙のように幾重にも畳んで小銭入れにしまっていたら、祖父にしかられた。「そんなに折ったら、お札が痛がって財布から出ていくぞ」▼北関東の茶どころ茨城県大子町で、久慈茶を煎茶道の先生からうやうやしくいただいたが格段うまいとは思わなかった。なぜなら子どものころ、自前の茶葉を摘んできた祖母が囲炉裏の炭火でつくった一番茶を飲んでいたから▼祖父母にはいい思い出ばかりがある。そうそう、祖父はよく抄子の髪の毛をなめて「しょっぱいから今夜は頭を洗おうな」と言ってたっけ▼弊紙の漫画「いわき君」や朝刊の人気漫画「コボちゃん」を見ていると、おじいちゃんと主人公の孫の漫才のような掛けあいが多い。父母とは違った慈愛に満ちた存在感。思えば、最近の映画やドラマで祖父母役を名演する役者がいなくなったような気がするが、どうだろうか。