きょうからマスク着用が個人の判断に委ねられる。ようやくというべきか、ただ重度の花粉症で、コロナ禍前、毎年のように冬になるとインフルエンザにかかっていた身からすると、外す気になれない▼学生の中には、違った理由で外すのをためらう傾向があるようだ。マスクが日常で、素顔を見せるのに抵抗があるという。恥ずかしさであったり、何をするにせよ顔を隠しているほうが〝楽〟だと▼社会人も一理ある。目は笑っているが実は舌を出すような場面に遭遇したとしても、表情が読まれにくく物事を運びやすい。口臭ケアに悩まなくともよい。化粧が楽との声も聞く。「取らないメリット」のほうが大きいのだ▼とはいえ学生時代の3年間、互いの素顔を知らないのが当たり前となると貴重な思い出が薄れてしまわないか心配だ。「友だちの顔がマスクで遮られてしまったことが何より悔しい」。記者が母校の卒業式で聞いた卒業生のひと言が、心に突き刺さる。
片隅抄