小川郷駅舎を解体するとの信じがたい話を耳にしたのは、元日号で掲載した小川出身の詩人草野心平の生誕120周年特集に取り掛かろうとした矢先のことだった▼この10カ月間、様々な方から話を聞いた。残念だ、悔しい、何とか残せないかとの声に反し、「老朽化なら仕方ねぇべ」との声が意外と多かったことに驚いた。食い下がると「じゃ言うが、例え残せたとしても誰が維持管理するんだ。費用は誰が負担すんだ」。心の内は分からないが、苦渋の決断だったことが容易に想像できる。部外者が何をほざいても言葉に重みがない▼駅舎で先日行われた感謝のイベントでは、心平の詩に音をのせた楽曲が披露された。哀しみと慈しみ、自然の摂理が表現され、惜しまれながらも消えていく駅舎を思いぐっときた▼駅舎は消えても思い出は色褪せない。福島高専の布施雅彦准教授が制作したデジタルアーカイブで、在りし日の駅舎が残ったことがせめてもの救いとなった。