中学3年生のとき、将来の夢に描いたのは芥川賞作家になることだった。この夢は、高校生になって詩人でもある担任から自作の小説を「こんなの小説じゃないよ、わっはっは」と酷評されて壊れた▼そんな自分が〝締め切りに追われながら原稿を書く〟という新聞記者になったのは偶然だが、さて今の中学3年生はどれだけ〝将来の職業〟について具体的な夢を描いているのだろう▼1日記者として中学生の「職場体験」を受け入れているが、必ずしも第1希望の職場ではないせいか、生徒に体験への興味津々という意欲が感じられないケースが多い。遠足と同じで、9時から15時まで恙(つつが)なく過ごせばいいやぐらいの感覚で▼事前に自分が体験する職業への下調べをする、御社ではこんなことを体験したいと事前に要望する……くらいあってもいいのではないか。まぁ、15歳にはその前に高校受験が控えているし、まだ真剣に「働く」ことを考えるに至っていないのだろう。
片隅抄