小学生のとき大相撲に夢中になったが、そのきっかけは第53代横綱琴桜傑将だった▼今のように体格と威勢だけはいいがヤワな力士ではない、大横綱大鵬はじめ、柏戸、佐田の山、北の富士、玉の海、貴ノ花、輪島といった名うての力士を相手にした。大関在位32場所。ときに〝姥桜〟と揶揄されたが、2場所連続14勝の〝狂い咲き〟で横綱に昇進した▼〝猛牛〟と呼ばれた風貌とぶちかましに、右おっつけ・左のど輪の〝型〟をもった攻める相撲に魅せられた。今のように下位力士相手に立ち合い変化して勝利を拾ったり、時間いっぱいから呼吸をずらして無意味な駆け引きする取組を見ていると、琴桜の器用ではないがひたむきな相撲が懐かしい▼その〝琴桜〟のしこ名を孫の琴ノ若が継いで、来る夏場所の土俵に上がる。新大関の先場所を父親と同じ琴ノ若のしこ名で務めたのは、関脇に終わった父親で師匠への感謝の気持ちの表れだった。番付表が楽しみな5月である。