偉大な詩人が旅立った。人類は小さな球の上で/眠り起きそして働き/ときどき火星に仲間を欲しがったりする――デビュー作の「二十億光年の孤独」は、70年以上経っても色あせることがない▼谷川俊太郎さんの作品は、視点が周りから宇宙にまで飛んでいく面白さがある。自我に目覚めた頃の話として、「『自分の座標を決めたい』っていう思いがすごく強かったんですね(中略)結局、宇宙に行き着いてしまって」(「詩を書くということ 日常と宇宙と 100年インタビュー」より)と語っている▼いわきアリオスに谷川さんが開館に合わせて書き下ろした「アリオスに寄せて」が飾られている。4編のうち「場」でも、「木の椅子に腰かけるのもいい」に始まり、「宇宙に抱かれて」いく醍醐味がある▼谷川さんは自らの作品が、いい意味で独り歩きすることを歓迎したという。「アリオスに寄せて」は、この街の文化芸術の拠り所として、私たちの中で広がり続けていく。
片隅抄