平均寿命が延びた現在、百歳を迎える方もひと頃に比べ珍しくなくなったが、その歩んで来られた年月を考えると、こちらの想像の及ぶところではない。特に戦争体験の有無が大きい▼朝の連続テレビ小説『あんぱん』を見ているが、つい最近の軍隊シーンは珍しかった。昭和時代のドラマなら当たり前に演出されていた古参兵から新兵への理不尽な殴打が、これでもかと流れたのには少し驚いた▼画面を通じて衝撃と痛みが伝わってきた。これがかつての大映映画『兵隊やくざ』の勝新太郎、田村高廣コンビならただ黙っておらず仕返しのため、ひと暴れしただろうと思った▼今年は米英などと戦火を交えた太平洋戦争終結から80年。その前には1937(昭和12)年、盧溝橋事件に端を発した日中戦争がある。その『兵隊やくざ』の舞台は中国東北部。大陸での戦火が収まらないうちさらに広い太平洋にまで戦局を拡大していった。近現代史の理解、解釈は未だ難しい。