新人のころ、先輩記者から当時の取材の苛烈さを聴いた。1985(昭和60)年にいわき市の中学生がいじめを苦に、自ら命を絶った事件だ。90(平成2)年に示された地裁いわき支部の民事訴訟判決では、全国で初めて学校の責任を認めた▼亡くなった生徒は金銭を要求されながら、学校側は市教委にいじめはなかったと報告していたという。家族の訴えが放置されていたことも問題となった。こうした悲しい話も、この街が直面した出来事として忘れてはならない▼市教委は24日、いわき市の公立学校で「生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める」いじめが発生したとされるため、市いじめ問題対策委員会を開催すると発表した。詳細は保護者の同意が得られず明かしてはいないが、発覚したのは2年前だった▼2年も経過した理由について、服部樹理市教育長は「学校が独自の調査をしていた」と説明する。遅きに失したとの批判は免れない。