平字田町に社屋があった若いころ、締め切り後に昼食を兼ねて書店、古書店をはしごするのが好きだった▼二町目にヤマニ書房の本店と古い時代の角忠があって、ラトブが建つ駅前交差点あたりにもヤマニの支店があった。時に白銀町のマルトモ書店まで足を延ばし、その近くの薄暗い小さな古書店を冷かす▼最後に会社の3軒隣にあった平読書クラブ(古書店)に立ち寄り、電車通勤の際は駅ビルの新栄堂書店も利用したものだ。昭和50年代の話だが、事ほどさように新刊書も古書もあふれていた▼父子家庭なので、休日の取材に幼い娘を同行させたときは、ご褒美にヤマニ書房の小名浜岡小名店や中岡店で絵本やコミックスを買ってあげた。その娘が念願かなって高校に合格した際、ヤマニ本店で教科書を受け取りに行った、あの本の匂いが忘れられない。14市町村規模の広いいわき市に残された書店はわずかしかない。時代の流れ? 本の魅力ってそんなものだったか?