著 者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
出版社:東京創元社
価 格:1870円(税込み)
自死の幇助求める老人の訴え。評議会での結論は
78歳のゲルトナーは、薬剤による自殺幇助を主治医に願い出た。子や孫に恵まれ、肉体的にも精神的にも健康体の彼は、40年以上連れ添った最愛の妻を亡くし、生きる意味を見いだせず命を絶とうとしていた。
ドイツの憲法では自死を自己決定権のひとつとして尊重しており、ドイツ連邦憲法裁判所は、2020年、自死の幇助を法的に認めている。しかし、倫理的問題としてはいまだ議論が尽くされているとは言い難い。
よって、弁護士、主治医、倫理委員会、医学、法学、神学者からなる評議会が開催された。
安楽死を望む一人の老人の訴えが、医師の倫理観と矜持、法解釈と判例・近隣諸国の実情、そして、神との関係性という核心へと議論は展開していく。
シーラッハは、この戯曲において何を問いかけているのだろうか?
欧州とは宗教も文化も異なる日本社会に生きる私たちにも投げかけられた一冊です。
(鹿島ブックセンター勤務)
※紹介する人:松井紀之さん