ボタニカルアート
いのちを描く(ハマエノコロ)9月2日掲載
エノコロは「犬っころ」から
連日真夏のような暑さが続いている。
参っているのは人間ばかりではなく植物も同じらしく、庭のカキはせっかく生った実をボタボタ落としているし、道端のエノコログサはいつもの緑色の穂を白色化させてしまっている。
エノコログサには数種類があるようだ。背が高く1㍍にもなるものやせいぜい20㌢程の高さにしかならないもの、その中間のものなどがあり、大抵、空き地などに多く見られるが、道端のコンクリートの割れ目にへばりついて生えているのもある。
差異は大小ばかりでなく花穂の形状や毛の色も異なる。調べると、背丈の高いオオエノコログサやアキノエノコログサ、低いのはハマエノコロで、それに花穂の毛が紫のものをムラサキエノコログサ、金色のをキンエノコロという。
面白いのは「エノコログサ」という名前で、これは花穂が仔犬の尾に似ていることから『犬っころ草』(いぬっころくさ)が転じて『エノコログサ』になったという。
名称が私たちの生活と深く関わってきたことを示して興味深い。何よりもブラシに似た花穂を垂れ気味にして風に揺れている様は美ごころをくすぐる格好のモチーフであることは間違いがない。
(ボタニカルアートの世界:冨田武子)