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震災特集<3>鹿島町の高羽さん 震災で変わったいわきの海描いた映画作る

 高校時代、映画に魅せられ将来の進路を映像制作に決めた、シネマグラフィックアーツ代表の高羽努さん(46)=鹿島町船戸。子どものころから、こよなく好きだったいわきの海が、あの東日本大震災で変わってしまった。
 震災以降、心の奥に沈殿するわだかまりを吐き出すかのように、海と人とのつながりを再構築するため自主映画を製作した。その完成上映会を5日、いわきPITで催した。
 監督、撮影、脚本を自らが担当したタイトル「うみのこえ」。津波で愛する家族を亡くし、深い悲しみと喪失感に打ちひしがれる海の男と、幻のように寄り添い立ち直りを願う一人娘の姿を、約50分のショートムービーで構成した。
 映画の冒頭は一人娘の花岡海が、いわきの海岸、高くそびえる防潮堤に沿って歩くシーンから始まる。あえてリアル感を抑えたオールドレンズが光彩を弱め、柔らかな感覚を醸し出す中、心情を吐露する。
 「2011年3月、海のまちといわれた私たちのまち。海の声は聞こえなくなった」「知りたくなかった真実とちゃんと知りたくなった嘘」「すべてをあきらめしまった人、強欲になった人。デマを流す人、それを信じる人」
 安全神話がもろくも崩れた東京電力福島第一原発事故、避難者と地元住民のあつれき、県産農水産物への風評被害、第三者的な「絆」「復興」の言葉の連呼。あの未曾有の災害を体験した、われわれの思いを代弁していると感じさせられた。
 居酒屋での一場面、注文した魚料理を「この魚どこの。ネットでさぁ、この辺の海、汚れてるってさ。ごめんキャンセル」と言い放つ客が登場する。店主が「お客さん、ここいらの港で揚がった魚はね、全国どこよりもしっかり検査されてんですよ」とポツリ。セリフの一言一言が、地元アマチュア劇団員の自然な演技で生きてくる。
 高羽さんは「最初から、この映画を撮ろうと思ったわけではない。震災後、市内被災地で取材を進める中での、もやもや感や、気づかないうちに人が海から距離を置いてしまった現実など、それを気づいて欲しかった」と話す。
 「うみのこえ」は6月から、いわきPIT、湯本駅前ミニシアターkuramotoで上映されることが決まっている。

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