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磐越東線・小川郷駅に駅舎取り壊しの議論 文人との縁ある価値も
1915(大正4)年に開業し、改修を施しながらも、小川出身の詩人・草野心平が利用した往時の姿そのままを残している、JR磐越東線の小川郷駅。1世紀以上におよび、地域住民の大切な足として親しまれているばかりか、生家や市立草野心平記念文学館とともに、郷里を代表する偉大な〝蛙の詩人〟心平を顕彰する存在として愛されてきた。
その駅舎が、老朽化を背景に取り壊しの危機に瀕している。大正の雰囲気漂う貴重な構造物、そして串田孫一をはじめ、心平を慕う文人が利用するなど、文化遺産としての価値が見直される中、保存を望む根強い声が上がっている。
カーは止つた。/おれは直ぐには立ち上がらずに改札口の方を見る。/天平が。/滅茶苦茶な顔をして手をふつてゐる。/鳥打をかぶつた晴夫もゐる。/いよいよ。/むしろしづかに腰をあげる。/小川郷。/これが昔もいまもふるさとの駅だ。
草野心平は1942(昭和17)年10月、中国から一時帰郷し、小川郷駅に到着した際の情景と心境を詩「故郷の入口」に残した。1989(平成元)年に無人となった改札口をくぐり、ホームへと向かう地下道の突き当りに詩が掲げられている。
こうした中、JR東日本は今年4月、地域づくり団体「小川郷(さと)の会」をはじめ、地元住民に「小川郷駅改修計画」を示した。老朽化が進む駅舎の現状を説明し、本年度中の建て替えを視野に入れたスケジュールや方向性などを〝提案〟した。出席した関係者によると、「7月までに駅舎の物品などを撤去してほしい」などといった具体的な内容も含まれていた。会長の草野充宏さん(66)は、保存の可能性について模索を続けていただけに、落胆した。
ただJR東日本福島支店は「『検討段階』で、住民の声をなるべく反映して方向性を決めたい」と語り、赤字路線を背景とした合理化とは関係なく、あくまで老朽化に伴う安全性などを担保するための〝提案〟と強調する。(本紙より構成・抜粋しています)