いわき湯本高(阿部学校長)の遠野校舎は来年3月をもって、旧遠野高時代から続く75年の歴史に幕を閉じる。遠野校舎で学びを深めてきた生徒として、最後の卒業生となる3年生29人は、江戸時代から500年以上続く伝統工芸品「遠野和紙」を用いた卒業証書づくりに臨んでいる。
世界にたったひとつの証書は、3月1日の卒業式で手にする予定で、生徒たちは12月7日、地元との絆を大切にしてきた先輩たちの思いと母校への誇りを胸に、紙漉(す)きと真剣に向き合った。
遠野校舎では旧遠野高時代の1994(平成6年)度から、遠野和紙=当初は「いわき和紙」の名称=の製法を継承してきた最後の職人、故・瀬谷安雄さんをはじめ、地区のボランティアなどの協力を得て、遠野和紙による卒業証書を生徒たちに渡してきた。
瀬谷さんが亡くなり、地域おこし協力隊と地元ボランティアが製法を継承してきたが、2017(平成29)年度からは若手の人材育成などの意味も踏まえ、卒業生自身が原料となるコウゾ、トロロアオイの栽培・収穫から紙漉きまで、証書づくりに挑戦し、計241枚の証書をつくった。
本年度は、同協力隊の高嶋祥太さん(38)と、遠野和紙を生かした地域づくりに取り組む地域団体「伝統工芸遠野和紙・楮保存会」(高木忠行会長)などの協力で、原料の栽培と収穫を行ってきた。
9月に行われた「ふくしま高校生社会貢献活動コンテスト」(県教委などの主催)では、「思いをつなぐ遠野和紙継承活動」と称して活動内容を紹介した結果、優秀賞に輝くほどでその取り組みは高く評価された。
紙漉きでは高嶋さんと、同保存会の伊藤浩之さん(63)が講師として来校。生徒は高嶋さんたちに教わりながら、自分たちで栽培したコウゾ、トロロアオイを煮沸して溶かした紙料を簀桁(すけた)ですくい、卒業証書の厚みと形に整えた。
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