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草野心平の生涯「旅」で追う企画展 小川の記念文学館で始まる 貴重な品々一堂に

 旅はしたことはしたな。/若い時から。/あてのない放浪も――。小川出身の詩人草野心平の生涯を〝旅路〟という視点で振り返る、市立草野心平記念文学館の企画展「草野心平の旅 所々方々」が20日、小川町の同館で始まった。6月23日まで。いわき民報社など後援。
 心平は海外に強いあこがれを抱いて17歳で中国に渡り、広東省広州の嶺南大(現中山大)に留学した際、詩を書き始めた。
 4年間の在中を初端に国内外、欧米や切望していたシルクロードにも足を運んでおり、今展では旅の背景や足跡とともに、直筆日記や携行品、交流のあった小説家川端康成から譲り受けたステッキなど、貴重な資料約90点を並べた。
 心平は生涯で1400余篇の詩を残したが、取材や講演、療養、交流を深める知人と会うため日本全国、方々を旅した。確認できているだけで9割近くの都道府県を訪れているが、嶺南大時代の同級生の誘いを受けて中国に渡った。
 終戦後に命がけで引き揚げた後も、〝第二の故郷〟と位置付ける中国には訪中文化使節団副団長として足を向けている=「蛙の詩」で第1回読売文学賞を受賞したのは訪中の6年前、1950(昭和25)年。
 訪中を皮切りにソ連、フランス、スイス、インドなど、生涯で合計14カ国を訪問。フランスではパスポートとトラベラーズチェック以外の荷物を盗難され、1970年に韓国で開催された第37回国際ペン大会では、童詩「五匹のかえる」を英語で朗読し、観衆から拍手喝さいを浴びた、などといった逸話も残る。この折、川端康成からステッキが贈られた。
 心平の生涯を初めて〝旅〟という視点で振り返った今展では、終戦で全ての財産を没収され、詩人として大成する前の余裕のない時代から、確固たる地位を築き海外を渡り歩いた際の背景、エピソードを4章で紹介。旅先で記した直筆の日記、所有していたヤシカ製二眼レフカメラ、中国で購入した布靴など、初公開を含む貴重な資料約90点も合わせて展示した。
 専門学芸員の長谷川由美さんは「心平さんは蛙や共に過ごした動物たちを見下ろすことなく、『一緒に生きている』という感覚で受け止め、自身の詩に投影している。旅先で出会う人や事象に対しても感覚は変わらない。コロナ明けで旅行する機会が増えると思うが、心平さんの『ものの見方(価値観)』を参考にして旅を楽しんでほしい」と、今展の見どころを話している。
 (写真:心平がフランスで書いた直筆の日記)

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