平字田町の繁華街で5月26日に発生し、飲食店や雑居ビル12棟を焼いた火災から1週間が過ぎた。現場にはいまもがれきが散乱し、建物を挟む小道には車や歩行者の通行止めが敷かれており、鎮火したそのままの姿が残っている。
火災は5月26日午前10時ごろ、JRいわき駅前ビル「ラトブ」西側で起きた。建物が密集し、風が強まったことで燃え広がったとみられ、鎮火したのは約11時間半後の午後9時半ごろ。激しい火災にもかかわらず、けが人がいなかったことだけが幸いだった。
現場の目の前で、40年にわたり飲食店「スナック葵」を経営してきた野崎恵子さん(74)は肩を落とす。延焼はなかったが、消火活動などで店内が水浸しに。使えるものと使えないものに限らず、すべてのものを外に運び出さなくてはいけなくなった。
自身の年齢を踏まえ、店を閉じることも考えたが、常連客や家族から「もう少し続けてほしい」とあたたかい言葉を受けたことで、「今は片づけを進め、可能な限り続けられるよう頑張りたい」と思い直した。「こういう形で終わってしまうのはあんまりだ」。道のりは厳しいが、いち早く元通りになることを、野崎さんは誰よりも願っていた。
市消防本部では、2016(平成28)年12月に新潟県糸魚川市で商店街を中心に147棟が燃えた大規模火災を踏まえ、密集地や幅員の狭い道路、消火栓が遠いなど、火災発生時に混乱を生じやすい繁華街はじめ、市内77カ所の活動計画を翌年から事前に作成した。
今回の現場も該当地域に指定されており、計画に沿って迅速に対応することができたという。
同本部では関係各所と連携し、今月中旬から田町地区を手始めに、市内各地の飲食店街の防火指導を行うとともに、各消防署に同様の事案を踏まえた図上訓練の実施を呼び掛ける。山崎正人予防課長は「死者が出なかったことは幸い。いわきには密集地域が多いので、より一層火災予防を呼び掛けていきたい」と語った。
(写真:火災から1週間が過ぎた現場=3日昼)
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