内郷御厩町の市医療センターに本年度から、県立医大(福島市)の寄付講座「脊椎脊髄外科アカデミー」が設置された。同センターによると、脊椎・脊髄の疾患は需要が多い一方で、浜通りでは十分な診療体制が整ってなかったが、市が資金を提供する寄附講座により、新規診断・治療法の開発に向けて医師が派遣されることで、大学病院と同等の診療が可能となっている。設置期間は2年間。
県立医大脊椎脊髄外科アカデミー教授の渡辺和之医師(47)は「浜通りから茨城県にかけて中心となる病院として、たくさんの患者さんを引き受けていきたい」と話す。
背骨を構成して身体を支える脊椎と、その中の空間(脊柱管)を通る脳から連続する神経の束の脊髄。アカデミーで対応する代表的な疾患の一つ「腰部脊柱管狭窄症」では、加齢による椎間板の変性や骨の変形で脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで、下肢のしびれや足のもつれなどが生じる。
また椎間板の一部が飛び出して神経に当たり、手足の痛みやしびれを招く「腰椎椎間板ヘルニア」や、背骨のがんで転移での症例が多い「脊椎腫瘍」に加え、交通事故や転落による脊髄損傷も取り扱っていく。
いずれも場合によっては歩行が困難となり、日常生活に大きな支障をきたすため、適切な治療が不可欠と言える。
アカデミーには8人の医師が在籍し、渡辺医師を含め3人が主要な部分を担う。外来は週に1回で、30人程度の患者を診察している。渡辺医師は2009(平成21)年から1年間、同センター前身の市立総合磐城共立病院で整形外科医長を務め、その後も定期的に来市して手術に携わっており、いわき市の医療環境には明るい。
同センターではアカデミーを通じて、診療とともに、脊椎脊髄外科の発展に貢献し、地域に根ざした脊椎外科医の育成を行う考えを持つ。渡辺医師も「地元の方の治療が、医療センターでできるようになっていく」と期待を寄せる。
いつ自分が脊椎・脊髄の疾患にかかるか分からない中で、地域に頼れる病院があることはとても心強い。
(写真:脊椎脊髄外科アカデミーについて説明する渡辺医師)
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