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震災知らない世代も語り部に 中央台南中の生徒ら 薄磯の伝承館に立つ
東日本大震災・東京電力福島第一原発事故の教訓を後世に伝えるため、当時について知らない中高生が、新たに「語り部」を担う取り組みが進められている。担当したのは中央台南中の鈴木結瑛、新藤美花、鈴木蒼空さん(いずれも2年)と、同校の卒業生で磐城高の清水晶子さん(1年)。それぞれの学習や体験を自らの言葉でまとめ上げ、4日には薄磯三丁目のいわき震災伝承みらい館で、初めての発表の機会が設けられた。
きっかけは同校が昨年度の総合的学習の時間で、震災を取り扱ったことにさかのぼる。この時の1年生は2010(平成22)年4月からの1年間に生まれ、初期のできごとの記憶はないため、テーマに選んだという。
総合学習では、いわき語り部の会の石塚洋悦さんから話を聞いた上で、いわき市や双葉郡の被災地を見学。放送教育を専門とする亀岡点教諭のもと、生徒有志は語り部の活動や、原発事故で生後間もなく双葉郡大熊町から避難した友人の思い、津波被災から営農再開した話などを、1本の動画として制作した。
この作品は小・中学生と高校生による映像作品の大会として、今年3月のパナソニック主催「キッド・ウィットネス・ニュース(KWN)日本コンテスト2023」で、最優秀作品賞(グランプリ)に輝いた。
一連の取り組みを受けて、同館は「中学生語り部講座」を実施してはどうかと提案。亀岡教諭の教え子である清水さんも交え、4人は練習を重ねてきた。
このうち鈴木蒼空さんは薄磯生まれ。10カ月の時に震災に遭い、自宅は津波で全壊したが、もちろん記憶にはない。
ただ幼くして震災を経験した一人として、「赤ちゃんもお年寄りも、子どもも大人も体の不自由な人も、みんな無事に避難できることが『災害に強いいわき市』ではないか」と指摘。時に人に牙を向ける海の怖さを理解しながらも、「私は薄磯の海が大好き」と力強く呼びかけた。
発表後には「緊張したけれど、うまく話すことができた。これからも多くの人に聞いてもらえれば」と蒼空さん。石塚さんも「せっかくの機会なので一過性で終わらせずに、ぜひ同世代、特に震災学習で市外から来る子どもたちの前にも立ってほしい」と、引き続きの語り部に期待を寄せた。
(写真:自らの学びや体験を伝える生徒たち)