農業経営の改善や集団活動に意欲的に取り組み、優れた業績をあげている経営体や集団を表彰する「第65回県農業賞」(県、県農業会議、県農業協同組合中央会など主催)で、平塚宏(80)、美津子(73)さん夫妻=小川町塩田=が農業経営改善部門で受賞した。
宏さんは専業農家として地域農業の維持・発展に尽力する一方、長年にわたり小玉小の食育活動やまちづくり活動に貢献しており、今回の受賞を「青天の霹靂(へきれき)」と驚きながらも、持続的で魅力ある農業を実現するために今後も尽力していくことを誓った。
宏さんは生まれも育ちも小川で、小玉中(現小川中)から二ツ沼総合公園(双葉郡広野町)に校舎のあった県双葉経営伝習農場に進学し、農業の基礎を学んだ。
卒業後は定職に就きながら稲作農家(当初は梨、桃の果樹園も経営)の実家を手伝っていたが、1971(昭和46)年に父親が亡くなると営農活動に比重を置くように。農機具メーカーの販売店で営業兼整備士として勤務していたため、本腰を入れたのは定年後から。
現在は小川地区一円で自前の田んぼ約20haをはじめ、ほかの農家から約10haを受託し、妻の美津子さん、脱サラして家業に専念している長男の伸哉さん(50)とともに一家総出でコシヒカリなどを栽培している。
宏さんの「武器」は、サラリーマン時代に培った人脈と整備士としての腕前。新品で購入すれば数百万はする農機具(大型になると一千万円超の農機具も)を中古で手に入れ、自ら整備することでコストを抑え、家族での大規模営農を実現させた。
さらに震災、原発事故後は風評被害と戦いながら、放射性物質対策を含めた県独自の認証制度「ふくしま県GAP(FGAP)」を取得するなどし、いわき産米の安全性と信頼確保に努めてきたばかりか、この数年は進化著しいドローンを導入。農薬と追肥の散布に活用するなど、積極的にスマート農業技術を駆使して品質や生産性の向上にも注力している。
「魅力ある農業にし、新たに就農したいという人たちの見本になるよう頑張りたい」と宏さん。小川ではまさに「老いてますます盛ん」の代名詞たる存在で、きょうも美津子、伸哉さんとともに8月下旬から本格化した新米の収穫作業に汗を流している。
(写真1枚目:受賞の喜びをかみしめる平塚さん夫妻 2枚目:長男の伸哉さんと一緒に母校の子どもたちに稲作を教える宏さん)